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一匹+一人で一人前です。
◆犬:レディオ(♂享年16さい)
「あなたの生活プライスレス」を日々実践する俺様なM・ダックス。シニアになっても暴れん坊将軍♪ ◆ご主人:6969(♀) レディオの飼い主。酒&音楽を愛するひきこもり系ダメ人間。でもでも∪・ω・∪を愛する気持ちはたっぷりありますよ いい年こいて最近はフィットネス三昧。 ご意見・苦情等ございましたら メールにて犬小屋までお手紙くださぁい♪∪・ω・∪/ カテゴリ
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2004年 09月 30日
こんばんは。 「でんどういり!」@chima_sさんから渡された渾身のバトンを持って走る
・・・という大層なお役目にとまどうペリカン、「でんどうradio」 後半担当です。 ええと、冒頭っから宣言させていただきます。 お役目ごめんちゃい。 作品前半をお読みでない方はこちらへ。 第一回上清水賞についてはこちらへ。 さて、後半担当に託されたお題は 「デジタル化を象徴するような真相」 ・・・・・・・(フリーズ中)・・・・・・・。。。( ̄д ̄)/ エー・・・・・・・ト 『電気鼠の森』 後編 「ぼくには、みえない」 ピカチュウは目のまえで、眠っているのに。 ソウヘイくんは、部屋に入ってこない。 ベッドの上のピカチュウ、そして私のことさえ見えていないように きれいな青い空と緑の森がひろがる窓の外をだまってじっと見ていた。 「ここにいるよ。みえないの?」 もういちど言いかえそうとしたとき..... 一階から、おかあさんがおやつの時間を知らせる声がしたので ソウヘイくんは「先にいってるよ」と廊下の向こうに行ってしまった。 私はピカチュウを起こしてしまわないように、 そっと部屋を出てドアを閉めた。 おやつの時間、私はほとんどしゃべらなかった。 ケーキがすごくおいしいよ、ってソウヘイくんが言うけれど 焼きたてで私はまだ食べられないし、それにピカチュウのことが気になった。 ピカチュウのことはおかあさん達にも秘密にしていたから、ずっとだまっていた。 おとうさんとソウヘイくんはケーキを食べながら、ずっと学校のことばかり話していた。 ソウヘイくんはもしかして、私が嘘をついてる、と思っているんだろうか? いまもベッドの上で眠っているはずの、ピカチュウのことで頭がいっぱいだった。 おやつを食べてから、私は十日の森を散歩しよう、と言った。 あの森に行けばソウヘイくんにも、ピカチュウが見えるようになるかもしれない。 なんとなくそんな気がした。 十日の森は、どんなに太陽が明るくてもいつも薄暗くて涼しい森だ。 たくさんの木の枝をよけながら中へ進むと、遠くで少年たちの声がする。 虫取り網を持って走り回っている様子が目にうかぶ。 きっと歩いている内に彼らにも会えるだろう。 あの子たちも「ピカチュウ」と遊んでいたのに。 どうして、ソウヘイくんには見えないの? 辺りを見渡しながら先を進んでいるソウヘイくんは、私より歩くのがずっとはやくて こんなに背が高かったかな、なんだか知らない人みたいだな、と思いながら追いかける。 小さな茂みの前を通りすぎた。 私がピカチュウとはじめて出会った茂みだった。 ピカチュウはあのとき、ぶるぶる震えていた。 最初は森がこわかったから、虫たちと遊んだ。 そしてピカチュウと出会って......何度も森に通ううちに、なついてくれた。 虫取り少年たちもいっしょに遊ぶようになった。 深い緑色の樹木がかこむ世界。 生い茂った葉のあいだからこぼれてくる空のひかり。 でも森の中から見る空は、青くなかった。 まるで透明な穴の中にいる私たちをのぞいているように見えた。 「十日の森」の風景が私を追いこして、どんどん後ろへ過ぎていく。 何回も来た場所のはずなのに、なぜ知らない場所へ来たように感じるのだろう。 誰かといっしょに歩くのはとてもひさしぶりだった。 いままで一人では怖くていけなかった場所まで二人で歩いていった。 その先で、とつぜん暗い景色がまっぷたつに切られたように明るくなった。 見えるもの。 見えないもの。 目の前を歩いているのは、誰? 知らない場所。 知ってる場所。 知らない私。 ソウヘイくんが突然立ち止まったので、私はちょっとおどろいた。 空ではなく、穴の入り口を見つめたままでつぶやいた。 「せかいが変わることは、怖いことでも悲しいことでもないんだよ」 私にはソウヘイくんの言っている意味がよくわからなかった。 一つだけわかったのは、そこは森の終点だったということ。 ソウヘイくんが帰ってしまったあと、私が部屋にもどると ベッドの上にピカチュウはいなかった。 少しだけ開けたままの窓からふいてくる涼しい風が ゆっくりカーテンを揺らしているだけだった。 それから毎日「十日の森」に行っても、虫取り網を持った子たちには会えなくなった。 彼らがどこに住んでいるのか、私はまったく知らなかった。 そして、それからピカチュウを見ることはなかった。 二度目の引っ越し。 またソウヘイくんに会えるから、こんどは不安にはならなかった。 でも、このお家と十日の森からもうすぐ離れてしまうことは、とてもさびしかった。 夢だったのだろうか? ピカチュウも、子供たちも。 みんな。 私はベッドのはしっこに座り、まっくらになった窓の外をみる。 十日の森も、静かな夜空に囲まれながら眠ろうとしているみたいだった。 「せかいが変わることは、怖いことでも悲しいことでもないんだよ」 ソウヘイくんの言葉を思い出す。 でも、あのやわらかいシーツの音も しあわせなピカチュウの重みを感じたつま先も、まだ覚えている。 ピカチュウは本当にいたんだ。 ただ、ソウヘイくんにはもうみえなかったけれど.......... ---------------------------------------------------------------- おおきな建物がたくさん並んでいる僕の「まち」をはなれて はじめてやって来たその「まち」は、とても空気がおいしい、と思った。 「まち」の周りにある灰色の空気しか知らなかった僕は、 うれしくていっぱい空気をすいこんだ。 まっすぐ歩いていくと目の前に大きな森がみえて近づいてくる。 僕は車をおりてからずっとにぎっていた手をはなして、そこへまっすぐ走っていった。 なかに入ってみると、外から見るよりずっと暗くてしずかなところだったので 一人でいる僕はだんだん怖くなってきた。 (もどろう) そう思ってふりむいたとき。 茂みのなかで小さく丸まってふるえる、きいろくひかってる生きものを見つけた。 黒い目がうるうるしていて、こわがらせないように僕はゆっくりそこからはなれた。 入り口を出て、来た道をおりようとしたとき 僕を追いかけて丘をのぼってくるおかあさんがみえたので、安心できた。 この「まち」はびょうきになった人たちが「りょうよう」するために作った「まち」 森がある大きな丘の上からは、「まち」の形がよく見えた。 丸い形をしていて、まんなかにこの森がある。 森の右と左からまっすぐに伸びた大きな道は、「まち」のはじっこまでつづいていた。 いま僕が「十日(とおか)の森」の中で見たことをおかあさんに話すと、 おかあさんはちょっとだけびっくりした顔をしてから、目を細くしてうれしそうに笑った。 そして僕に、こっそりおしえてくれたんだ。 ピカチュウのこと。 後ろでモケイヒコーキをいじっているおとうさんには聞こえないくらい、小さくてやさしい声で。 「それはね...」 <了>
by radio6969
| 2004-09-30 21:53
| 企画のぼやき
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